ゴールドマン・サックスと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
超高学歴。桁違いの年収。隙のないスーツ姿。そして、仕事ができなければ即退場――。
そんなイメージの内側を語ったのが、元社員の田中渓さんです。YouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスのディープな世界」で、採用面接から給料、同僚の雰囲気まで、自身の経験を紹介しています。
ところが、その話は「エリート企業に入って人生安泰」という想像から、かなり遠いものでした。
入社までに面接53回。年俸650万円でスタートし、高収入への期待を抱いた翌年にはボーナスゼロ。
華やかな社名の向こうにあったのは、どんな世界だったのでしょうか。
※本記事は、2026年10月6日公開の対談動画をもとにしたものです。田中さんの在籍当時の体験・見解と、現在の公式情報を区別して紹介します。個人の経験が全社員・全部門に当てはまるわけではありません。
そもそも田中渓さんは、ゴールドマンで何をしていた?
田中さんによると、ゴールドマン・サックスに在籍したのは2007年から2024年までの17年間。
担当していたのは、会社の資金を使って投資する仕事だったそうです。顧客に金融商品を紹介する仕事や、企業の買収・資金調達を支援する仕事とは、性格が異なります。
この違いは、その後に出てくる「採用基準」や「成果の測られ方」を理解するうえで大切なポイントです。
同じゴールドマンでも、配属先が違えば、求められる能力も仕事の景色も変わる。今回の話は、田中さんが経験した投資の現場から見たゴールドマン像です。
面接53回!「最終面接」の次も、まだ面接?
まず驚くのが、田中さんの面接回数は53回だったという話。
数回受けただけでも緊張する就職面接。それが53回となると、入社前から社員の顔を相当覚えてしまいそうです。
田中さんの説明では、当時の選考には筆記試験、グループディスカッション、グループ面接、個人面接がありました。個人面接では、実際に一緒に働く部署のメンバーと会っていったそうです。
ところが、一通り会い終えたと思ったら、まさかの2周目へ。
背景には、採用枠をめぐって比較されていた別の有力候補の存在があったといいます。
つまり、「ゴールドマンを受ける人は全員53回面接する」という話ではありません。田中さん自身も、より少ない回数で内定した人について語っています。
面白いのは、選考で評価されたと本人が説明するポイントです。
もう一人の候補者が安定して高得点を出せるタイプだったのに対し、田中さんには、起業経験などを通じて、ときに大きな成果を出す可能性を見いだした――という趣旨の説明を受けたそうです。
投資する部署が、採用でも人の可能性に賭ける。会社の仕事と人選が、どこか重なって見えるエピソードです。
今の採用も同じなの?
2026年10月に確認した日本向け公式新卒採用ページでは、部門別採用が案内されています。選考の流れには、エントリー、SPI、録画形式のウェブ面接、部門ごとの面接が掲載されています。
動画の昔の体験談と、現在の応募手順は分けて読む必要があります。
過去の初任給は?田中さんは「年俸650万円」でスタート
気になる給料について、田中さんは2007年の入社時は年俸650万円だったと説明しています。
ここでいう650万円は、月給ではなく年額です。
ただ、数字だけ見て「やっぱり高給!」で終わらないのが、この対談の面白いところ。
田中さんは、若手時代には1日18時間、長いと20時間ほど働くこともあったと振り返っています。給料の話でも、当時の長時間労働を踏まえると、時給換算ではアルバイトと大きく変わらないという趣旨の冗談を交えていました。
年収を見て驚き、働く時間を聞いてもう一度驚く。華やかな金額にも、分母があったわけです。
もちろん、これは田中さんの当時の経験です。現在の全社員の勤務時間や給与条件を示す数字ではありません。
参考:動画・働く時間(18分30秒〜)、入社時の給与(25分28秒〜)
「現在は初年度1,000万円超」はどう読む?
動画では田中さんが、現在の初年度給与について1,000万円を超えるという趣旨の発言もしています。
ただし、本記事では日本の全新卒社員に共通する公式給与としては確認できていません。基本給なのか賞与込みなのか、どの部門・採用条件なのかも含め、現在の一律の初任給として断定するのは避けたいところです。
給与の数字は、「いつ・誰の・何を含む金額か」までセットで見ると、実態をつかみやすくなります。
「30歳までに年収1億円」の期待が、翌年にはボーナスゼロに
入社当時、田中さんの周囲には、給料が大きく伸びていき、30歳までに年収1億円を目指すような雰囲気があったそうです。
ただし、これは全員に約束された昇給制度ではなく、当時の期待感を伝える話です。
そして2007年入社の田中さんを、翌2008年にリーマン・ショックが直撃します。
本人によれば、ボーナスはゼロになり、周囲の先輩たちも職場を去ることになったといいます。高収入への期待を胸に入ったところで、業界そのものが大きく揺れたのです。
この話から伝わるのは、入社できたことと、その後も高い報酬を得続けられることは別問題だという点。
会社の公式説明でも、報酬は会社・部門・個人の業績など複数の要因によって決まるとされています。個人が頑張れば、周囲の環境に関係なく必ず増えるという仕組みではありません。
参考:動画・給与への期待と金融危機(26分42秒〜)、公式・報酬の説明
社風は冷たい?田中さんが見ていたのは「一緒にいられる人か」
数字と合理性だけで動く、冷静なエリート集団。
そんなイメージに対して、田中さんが語る職場には、意外にも個性の強い人たちが登場します。
本人は、他社の社員から受けた印象と比較し、ゴールドマンには変わった人が多く、自分にとっては刺激や面白さを感じる環境だったと振り返っています。
印象的なのは、会社を選ぶ際に、頭のよさや尊敬できるかだけでなく、長時間を一緒に過ごせる相手かを見ていたことです。
面接は、会社が応募者を選ぶ場。しかし応募者にとっても、「この人たちと毎日働く自分」を想像する場だったのでしょう。
会社の知名度や年収ランキングでは分からない、かなり生活に近い判断基準です。
待遇は豪華なのか?当時の感想と現在の制度は分けて考える
田中さんは、入社当時の給与条件や福利厚生について、かなり簡素だったという趣旨の説明をしています。
一方、現在の公式サイトでは、医療・健康支援、休暇、育児・家族のケア、メンタルヘルス支援などが案内されています。内容や適用条件は勤務地などによって異なると明記されています。
したがって、昔の体験談だけから「今も福利厚生がほとんどない」と結論づけることはできません。
待遇を見るときは、給与額に加えて、休暇、支援制度、実際の働き方まで確認する。今回の動画は、その必要性も感じさせます。
スーツ姿にも社風が出る?最後は少し笑えるエピソード
厳しい話が続くなか、服装のエピソードでは空気が変わります。
田中さんは、当時の同僚たちの体に合ったスーツやシャツの襟、ボタンの開け方について、ユーモアを交えて紹介しています。
六本木ヒルズのエレベーターでは、服装の雰囲気で、どこの会社の人か分かったという話まで。
もちろん、正式な服装規定の説明ではありません。本人による、当時の職場の空気を切り取った思い出話です。
それでも、数字に厳しい金融のプロたちが、自分たちのスタイルを楽しんでいたというのは、少し親近感が湧くところ。完璧に見えるスーツ姿にも、人間らしい気分が隠れていたようです。
高給の看板の向こうにあった「働く人の現実」
今回の対談で興味深いのは、高収入や厳しい選考の数字だけではありません。
入社前には、自分が選ばれる理由を探す。入社後には、想定外の金融危機に直面する。それでも周囲の力を借りながら、自分が貢献できる役割を見つけていく。
田中さんの話には、そんな試行錯誤がありました。
社名は華やかでも、その中で働く人の毎日は、きれいな成功物語だけでは語れない。
「すごい会社に入った人」の話として見るのはもちろん、「自分ならどんな人たちと、どんな条件で働きたいか」を考えながら見ると、この動画はさらに面白くなりそうです。
参考動画:丸山ゴンザレスのディープな世界/元ゴールドマン・サックス田中渓さんとの対談(2026年10月6日公開)

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